2012年5月29日火曜日

ネットが促す直接取引きと標準化【ケミカル業界と汎用品業界との違い】

「利益率を上げるため」、「囲い込みをするため」と言う二つの手段を使うことにより、特定の会社の製品しか使うことが出来ないようにするというのは、かつては製造業の常套手段でした。それは、サイズを変えたりして、規格外の製品を作ると言うことがメインであり、他には素材を変えたりするということも行われています。しかし、ケミカルの業界では、これがうまく言っていません。それが、利益率の高さに繋がる訳ですが、ケミカル製品は、様々なノウハウの集積ですからね。

言ってしまうと、材料を入れる順番、混ぜ方、温度など、ちょっと条件が変化しただけで組成が違うものが出来てしまい、品質に大きなバラツキがでてしまうと・・・・・。そんなことがあるんですね。ですから、化学品メーカーや化学品商社は、しっかりとエンドユーザーを管理しているわけですし、管理できる大義名分が出来るわけです。先日、トレハロースやインターフェロンで有名な岡山の林原を買収した長瀬産業にしても、稲畑産業にしても、給与は極めて高いですし、利益率も商社にしては、極めて高いです。本当に、商権というのがあって、商流と物流をしっかりと押さえる。場合によっては、ある特定エンドユーザーのみの特殊品をつくり、型番もそのメーカーのみにするといった管理の仕方をしているところもあります。

「同じ機械を使って、同じ材料を使って、同じ環境で、同じ製品を作る」と言う大前提が基本的にはあり、すべてが同じ環境であれば、製品にバラツキがでないって考え方なんですよね。それにしても、化学・科学というのは、全て理論の裏づけ・技術の裏づけがある訳で、非常に納得なんですが、MSDSを見ても「企業秘密」などとかかれており、本当にブラックボックス化されているところが多いんだなと改めて思いました。

これらのように、ケミカル業界というのは、極めて厳格な管理が行われており、しかも製造工程がそのままノウハウのようなところがありますから、価格も高止まりしているところがありますが、それが汎用品となったらどうでしょうか?これが、上流部門の鉄などの素材系であれば、製造工程のノウハウなどは極めて大きいものの、下流部門である素材を加工する会社であれば、一般的には競合他社が極めて多く、参入障壁は低いため、常に価格低下の圧力がかかりますし、特殊品(特殊素材・特殊ザサイズ)を使うメリットは殆どなく、むしろデメリットの方が目立ってしまいます。

理由は、特殊品は、万が一を想定して、ストックを持たなければならないこと、更には製造ラインの段取り替えなどで、製造にも通常の汎用製品と比べ多くの時間を要すること、材料の調達にも時間がかかることなどがあります。従って、ネット全盛の時代では、エンドユーザーが賢くなり、購買部門がメーカーに直接連絡をするようになって相見積もりをとるようになり、さらにはエンドユーザーのエンジニアも知識や技術の蓄積を持つようになり、サプライヤー側が、特殊製品を買わせ、その会社のリピートユーザーになるということを見抜くようになりました。ですから、設計の段階で安全係数のチェックなどができ、規格のことを良く理解しているエンジニアが居る場合は、即修正をさせ、標準品仕様にさせるんですよね。また、サプライヤーがたったの一社であれば、東日本大震災やタイの洪水でも明らかになったように、一社購買では、会社が潰れた時や工場が生産停止に陥った際に、代替がきかないので、リスクマネージメントの観点からも複数社の購買にするということは、直近見られるようになった形態です。確かに、日産が過去改革に手をつけたように、複数社と言っても、それが10社以上などある場合は、無駄が多いので、せいぜい2社か3社ですね。

JISやISOなどが規格品の例ですが、規格外と言うのは、よほどの理由が無い限りメリットのあるものではないんですよね。エンドユーザーがそれを知らないことをいいことに、オーダーメードで全てを設計・製作をしている会社があることを知り、過去に驚いたことがあります。エンドユーザーも馬鹿ではないですし、高いコストをずっと気前良く払うわけではないので、こういう会社は将来的には淘汰されるだろうなと思いました。ただし、ケミカルの業界に限って言うと、基礎研究に膨大な時間を費やし、設備投資にも莫大な金額を要するため、よほどのことが無い限り難しいだろうなと思いました。以前、「士農工商・エタ・ヒニン・プレス・ダイキャスト・ゴム・プラスチック」と書いたことがありますが、本当に高い技術や熟練が要求されても、下流の汎用的で競合が多いところは、本当に大変だなと改めて感じた次第です。

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