2014年6月28日土曜日

ナノセルロースなどのナノテクノロジーの今後の可能性【新素材への希望と新技術:船や建設分野で鉄に代わって使われたら・・・・】

カーボンナノチューブやDSS(ドラッグバリーシステム)のブームがあったのが10年くらい前でしょうか、私がナノ技術に興味を持った時期でした。特に、素材分野でナノテクノロジーが実用化されれば、工業分野で劇的な変化があると思っていたからでした。理由としては、「今までの特性が全く変わる」という一言に尽きます。燃えないものが燃えるようになったり、水に溶けないものが溶けるようになったり、透明ではないものが透明になったりと、性質ががらっと変わります。その他、弾力をもったり、強度があがったり、触媒になったり、色々な応用分野が期待されています。

カーボンナノチューブは半導体への利用が検討されたり、あとはナノセルロースは自動車に利用されたりなどの可能性があります。ナノセルロースについては、比重が鉄の5分の1で、強度が5倍というのですから、今まで鉄が使われてきたものが置き換えられる可能性があります。加工性が良いのでしたら、様々な分野で鉄から置き換えることができ、鉄が抱えていた問題を一気に解決することが可能です。その鉄が抱えていた問題とは、サビや金属疲労などですが、これが解決できれば、様々な分野で代替がすすむこととなるでしょう。ただ、問題はコスト面ですけどね。一方で、カーボンナノチューブは、鉄の数十倍の強度を持ちますが、コストがべらぼうに高いため、よほどの生産革命がない限りは、日の目を見ないと思います。但し、これがスマートフォンやパソコン、タブレットに使われるとなると話が違ってきます。今の半導体は名前のとおり、電気を通したり、通さなかったりの導体なのですが、これにナノチューブの技術が応用されたら、今のシリコン(珪素)で作っているものの何十倍もの性能の集積度にすることができるので、低電力、低発熱でしかも演算速度が速いものができます。おそらく、消費電力の問題が電池の問題にも絡んできているため、将来的には、半導体がシリコンからナノチューブに代替する日もくるんじゃないかなと思っています。

カーボンと言えば、炭素繊維がボーイング787で採用されて、翼やボディなどに主に利用されていますが、その弾性の高さと錆びないという特性があるにもかかわらず、ネックとなっているのは、価格なんですよね。ですので、価格さえこなれた価格で市場にだすことができれば、いままで鉄が担ってきたものが代替できてしまうので、そのインパクトは大きいです。

特に、海洋分野で導入が進めば、杭や海洋構造物もそうですが、船がナノセルロースで代替できたら凄まじい量になるでしょうね。船などは、船の価格が鉄の価格が船価に大きく反映されているように、言い方は悪いですけど鉄の塊です。従って、船がナノセルロースを活用してできるようでしたら、その軽量化の恩恵は極めて大きいと思います。コンテナ船やVLCC(タンカー)などの運用もひょっとしたら変わるかもしれません。このナノセルロースの原料となるのが木や稲などの植物というのが驚きです。そして、資源の量も世界中あるため、極めて大きいと。ちなみに、この木などの植物に含まれるセルロースがダイナマイトなどの爆弾などの原料になっていると言うのも驚きでしたが・・・・。

個人的には、「鉄は国家なり」と言われるぐらい、鉄って私たちの身近なところで活躍していますし、産業の骨格を成すものだと思っているんですよ。その強度や耐久性やニッケルなどを混ぜれば、錆びに極めて強くなったり、磁性がなくなったりと私たちが使いやすいようにその特性を変えることも可能ですから、私たちの生活にはなくてはならないものです。そのベースメタルともいえる鉄が置き換えられるとしたらとてつもなく大きな変化でしょう。統計を調べていないので、なんともいえないのですが、建設と造船、自動車分野で鉄の需要を見てみると、おそらく生産量の8割はこの分野じゃないでしょうか。機械や工具など、この三つに比べたら無視できるぐらい鉄の市場としては小さいですからね。高層ビルなどでも鉄から置き換えることができたら、耐震性などで非常にインパクトが強いものとなるでしょう。耐熱性や耐火災の問題が冒頭でも述べたコストの問題が解決できれば、加工性の問題もあるでしょうが、一気に置き換えは進みますね。

産業が成熟して久しいですが、素材分野って、今までの常識を一気に覆す特性を持っているんですよね。これがコンポジットレジンのような歯科素材として用いられたら、強度や磨耗の問題からいままで金属を詰めていたものが代わるんじゃないかとか、いろいろ考えるところがある訳ですが、私は技術には全く素人なので、これは妄想に基づくものなんですけどね。

基礎研究って、成果がでるのに気の遠くなるような時間がかかって、言い方が悪いですけど、新薬なんかの分野で言われますが「千三つ」なんですよね。千個研究があったら、3つ成果がでれば良い方という意味なんですけど。日本企業が今、過去の遺産で食っている会社が多いと形容されるのも、R&D(研究調査)が真っ先に削られたと言うのも、目先の目に見える成果がないからということなんですが、バイオ企業の林原が破綻はしてしまいましたが、トレハロースやインターフェロン分野で市場を席巻していたように、研究開発に軸足を置いていたからなんですよね。正直、日本企業のなかからは、このような会社がなくなりつつあるので、林原というのは、単独で生き残ってもらいたかったんですけど、今は長瀬産業という超優良の化学専門商社の傘下にあります。

機械とか電気なんて、学問で体系化が進んでしまい、完全にコモディティ化されてしまいましたが、素材分野は、ナノ技術のように、根本の概念が変わるだけでがらっと違った市場が生み出されます。この分野は、日本企業が成長戦略として描くにはとてもよい分野ですので、政府が主導して税の優遇とかいろいろなことをやって、企業側のモチベーションをあげてもらいたいもんですよ。産学連携も、最終的には銭・金の問題でしょうから。



●知恵も資源もある日本が優位になる時代の到来
 世界をリードできるセルロースなのファイバーとは何か
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40963

●ナノテクノロジー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%8E%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%8E%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC


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