2026年9月時点で見ると、ニデック(旧・日本電産)の今後は、「これまでの急成長企業」から「大規模な再建を経て、もう一度成長軌道を作れるかを試される企業」へ移行する時期だと考えるのが適切です。再建王、買収王の永守の代わりは誰も務まらず、何度も社長を譲ったものの、自分が返り咲いています。しかし、既に永守も良い歳になり、いくら天才と言っても、あれだけの規模の会社と時代の変化にはついていけなかったのでしょう。
現在の最大の問題は、EVやモーター市場そのものよりも、会計不正を契機としたガバナンス・内部統制の再構築です。2026年には第三者委員会による調査が行われ、多数の会計不正が確認され、主要役員の辞任など大幅な経営体制の刷新が進められています。会社自身も「新生ニデック」への再生を掲げています。N
一方で、ニデックの事業基盤まで失われたわけではありません。精密小型モーターではHDDやデータセンター関連、水冷モジュールなどが伸びています。車載では電動パワーステアリング用モーターなどに強みがあり、EVトラクションモーターについても戦略転換による収益改善を進めています。また、家電・商業・産業用では発電機、BESS、インフラ向け大型モーターなどにも事業領域を広げています。
特に注目したいのが、AI・データセンター関連です。AIの普及によってデータセンターの電力消費と発熱が増えれば、冷却用ファン、水冷システム、モーターなどの需要が拡大する可能性があります。ニデックはすでにHDD用モーターだけでなく、水冷モジュールなどデータセンターの熱対策に関係する製品を展開しています。したがって、今後のニデックを見るうえでは「EVモーター会社」という見方だけでは不十分です。
そして、もう一つ重要なのが経営思想の転換です。これまでのニデックは、永守重信氏による強烈なトップダウン経営とM&Aによって急速に規模を拡大してきました。しかし今回の問題を受け、今後は各事業部門が自らリスクを考え、現実的な計画を作る方向へ転換しています。第三者委員会の資料では、2027年度の連結売上高目標が2兆9,000億円、ROIC12%とされ、従来よりも下方修正された現実的な計画になっています。
したがって、私は今後のニデックを「一度大きく壊れた会社が、内部統制を立て直しながら、モーターという本業の強さを再利用して再成長できるか」という局面として見るのが分かりやすいと思います。
うまく再生できれば、AI・データセンター、車載、産業機器、エネルギー関連という複数の成長分野を持つ総合モーターメーカーとして、再び成長企業として評価される可能性があります。一方で、ガバナンス改革が形だけに終わったり、過去の会計問題による財務・信用面の影響が長期化したりすれば、成長投資よりも問題処理が優先される期間が長くなる可能性があります。
つまり、ニデックの今後を決めるのは「モーター技術があるか」ではなく、「企業統治を本当に変えられるか」と「AI・データセンターなど新しい需要をどこまで取り込めるか」の二つです。
個人的な印象では、ニデックは「終わった会社」と見るより、巨大企業になった後に組織そのものを作り直す段階に入った会社と捉えたほうが、現在の状況を理解しやすいです。なお、これは株価の上昇・下落を予測するものではなく、事業面から見た今後のシナリオです。
0 件のコメント:
コメントを投稿