私が以前から指摘している人口動態の学説は、中国の少子高齢化の経済に対するインパクトという仮説が、ハーバード大学の人口学者デービッド・ブルームらの研究で提唱されたわけですが、彼らが10年ほど前に特定した「人口ボーナス(恩恵)」と「人口オーナス(負担)」の経済に与える影響の大きさが極めて大きいと言うことが実証されつつあります。
あと、私が主張してきているのが、「世の中にある組織と言う組織はピラミッド型でなければ維持できない」と言う説です。それは、身近なところでは家族組織から、学校組織、会社組織、軍隊、そして国家です。また、身近なところでは、相場の世界で勝って生き残っているヒトが全体のたったの5%未満ということもデータが証明しています。
私は国家の盛衰として「教育」「人口」「技術」と言う三つの柱があると考えており、それを実現させるための社会インフラが必要だと思っています。その社会インフラとは、港湾、空港、道路(高速道路網も含む)、鉄道、水道、電気と学校です。
「モノを作る前に教育によってヒトを作り」そして、モノは良好な社会インフラの下で、熟練した労働者の熟練した技術によって作られることが工業国の条件だと思っています。日本の強さとは、中小企業の強さでもあり、底辺の労働者の教育水準の高さでもあった訳です。
それを考えると、先進国の良いとこ取りをして、外資を導入してすごい勢いで成長した中国ですが、先進国になる前に「中所得国の罠」にはまってしまう訳です。また、各国が経済成長の過程で一度だけ享受できる人口ボーナスも2015年に使い果たしてしまう訳で、一人っ子政策の歪など、ものすごいスピードで国家の衰弱に繋がっていくわけです。戦争、大規模な疫病などの要因がなければこれは、既に統計によってほぼ確実に予想されていることであり、日本の事例を見るまでも無く、明らかなことです。本当に、マスコミ等でも既に騒がれていることですが、仮説が検証され、実証されるのがとても楽しみなことではあります。
アジア諸国は、キャッチアップ型の雁行型経済(雁が空を飛んでいるのが先進国を手本にしているのを比喩して)な訳で、コピー型経済と私は呼んでおり、先進国の経済、特にルックイースト政策に代表されるような近隣で最も効率的で最短期間で驚異的な経済成長を遂げ、さらには体系的にも文化的にも辺縁に位置する日本を真似るのが手っ取り早かった訳ですが、それは、10年、20年後の衰退という同じ姿の投影でしかないと思っています。
成長のエンジンは、無尽蔵にある廉価な労働力若しくは、安価に提供されるエネルギー(石油等)だった訳ですが、既に世界は、最後の有望市場であるインドに手をつけており、その先の向こうには、何も残っていないのが現実です。資本主義の未来、地球の未来がどうなるのか、試金石はここ1、2年でその道程は明らかになると思っていますがよほどの革命的なことがおきない限り、現状は打破できないと思っています。本当に、世の中とは、良くできているもので、問題を解決しても次々と問題が出てきます。その最たる例は、世の中が便利になっても、人間関係は便利にならず、逆に人間関係の希薄化等に起因して問題が発生していることは、皮肉でもあります。
私は、世の中には必ず、セーフティネットは必要だと思っていますが、過度なセーフティネットは、モラルハザードを惹起し、そのコストによって本体をも駄目にしてしまうと考えています。それは、現在の過度の医療行為であり、尊厳死の問題でも取り上げられていますが、無意味な生命維持活動や後期高齢者医療の問題だと思っています。
正直、いいとこ取りだけなんてできないんですよね。メリットがあれば、必ずデメリットがある。これは、世代間で需要の先食い、利益の先食いをしてしまったことを後世に残しているというのが一番の問題なんですけどね。そもそも、人生50年だったものが、人生80年になって、今まで何百年、何千年と続いてきた人口動態が、たったの50年のうちに大きく変わったことが影響を大きくしたことのほうが問題なんですけどね。それにみんな気づいていないと、気づいていても見ない振りをしていると。多くは問題を先送りにしているだけですけど、もう、先送りも限界に近づいていますから。
●中国は先進国になれない
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2012/01/post-23...
最大の強みだった豊富な労働力は過去のもの。巨大な成長マシンが一気に崩れる意外な理由とは